パリのルーヴル美術館に通うようになって35年になります。私をそれほどまで魅了するのは、ルーヴルでは「ヌードの歴史」を観ることができるからです。紀元前のギリシャ彫刻から19世紀のイタリアやフランス彫刻まで、時代をたどって裸体彫刻を観ていくと、「人間の存在」そして「人間の肉体」というものを強く感じさせられます。何度訪れても興味はつきません。
今回の『石の肉体』は、2004年、銀座ニコンサロンでの写真展『美の王国』の延長線上にあり、その中から「エロティシズム」をより追求したいという思いからの作品です。白い無垢の大理石でつくられた19世紀フランス彫刻の美しい部分、微妙な石の肌をモノトーンで表現したいと思いました。
(日本カメラ8月号・口絵ノートより)